先に結論
中国系AIモデル比較で大事なのは、安いかどうか よりも、どの業務に現実投入しやすいか です。
ざっくり結論を先に言うとこうです。
- Kimi K2.5: いちばんバランスが良い。マルチモーダル、256K文脈、agent、UI生成まで広く見たい人向け
- GLM-5: コーディング、長距離agent、複雑なエンジニアリング寄りなら最有力
- Qwen 3.5: Alibaba / Qwen エコシステム、1M文脈、native multimodal と tool use を重視する人向け
- DeepSeek 系: 価格優先で text中心に攻めたい人向け。ただし現時点では「DeepSeek V4」より、公式に確認しやすい DeepSeek V3.2 系 を基準に見る方が安全
つまり、
- 総合バランス なら Kimi K2.5
- coding / agent 主力 なら GLM-5
- Qwen / Alibaba 基盤との相性 なら Qwen 3.5
- 低価格の text API なら DeepSeek 系
この見方が一番実務に近いです。
なぜ今この比較が重要か
2026年は、OpenAI / Claude / Gemini だけを見ていれば十分、という時期がかなり終わっています。
理由は単純で、中国系モデル群が以下をかなり強く押し出しているからです。
- 低価格
- 長文コンテキスト
- coding / agent 最適化
- マルチモーダル
- OpenAI 互換APIや既存ツール互換
実際、Qwen 3.5 は 1M context と official built-in tools を前面に出し、GLM-5 は「Agentic Engineering」を掲げ、Kimi K2.5 は 256K context + multimodal + agent を揃え、DeepSeek は V3.2 系で reasoning-first と低価格の魅力を維持しています。
この時点で、比較の論点は「どれが一番話がうまいか」ではありません。
- 長文ワークフローをどれだけ壊さず回せるか
- coding agent としてどこまで任せられるか
- 画像 / 動画 / UI まで扱えるか
- トークン単価とキャッシュでどこまで運用コストを落とせるか
- 日本語や英語以外を含む運用で破綻しにくいか
このへんが本番では効きます。
まず注意: 「DeepSeek V4」検索と実際の公式提供はズレやすい
この比較で最初に整理しておきたいのがここです。
検索需要としては「DeepSeek V4」で探す人がかなり多いですが、2026-03-28時点で公式APIドキュメント上で明確に追いやすい中心は DeepSeek V3.2 です。deepseek-chat / deepseek-reasoner が V3.2 系に対応していること、公式更新ログでも V3.2 系の更新が確認できます。
なので実務上は、V4 という期待値で比較するより、今ちゃんと呼べる公式モデルを基準に判断する 方が安全です。
この記事ではその前提で、DeepSeek 枠は 現在の実利用基準として V3.2 系 を置いて比較します。
比較表
| モデル | 強い用途 | 目立つ強み | 注意点 | 価格感 | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|
| Qwen 3.5 | Qwen/Alibaba基盤、multimodal、長文、tool use | 1M context、native multimodal、adaptive tool use | 日本語圏では実務事例の見極めが必要、価格情報が追いにくい | 要確認 | 4.6 |
| DeepSeek V3.2 | 低価格text API、reasoning、text中心の開発補助 | 低価格、OpenAI互換、thinking/non-thinking の分離が分かりやすい | 画像/動画の主力比較には向かない、V4検索との情報ズレに注意 | かなり安い | 4.5 |
| GLM-5 | coding、agentic engineering、長距離タスク | 200K context、128K output、SWE-bench / Terminal Bench の強さ | multimodal主役ではない、最高性能帯はコストも上がる | Input $1 / Output $3.2 | 4.8 |
| Kimi K2.5 | 汎用、multimodal、agent、UI生成 | 256K context、thinking/non-thinking、画像/動画理解、agent適性 | tool利用時のthinking制約に注意 | Input $0.60 / Output $3.00 | 4.8 |
4モデルの違いをひとことで言うと
Qwen 3.5
Qwen 3.5 は、Alibaba 系で広く展開される native multimodal / tool-first モデル です。
公式情報では、Qwen 3.5 系は native vision-language、1M context、built-in tools、adaptive tool use を強く打ち出しています。さらに Alibaba 側の案内では、Qwen3.5-Plus が hosted model として使え、thinking や search も有効化できます。
つまり Qwen 3.5 の本質は、単なる会話モデルではなく、大きい文脈とツール利用を前提にした基盤モデル群 だということです。
向いているのはこんなケースです。
- Alibaba Cloud / Qwen 周辺を使う
- textだけでなく視覚理解も視野に入れる
- 長い仕様や資料束を一気に扱いたい
- search / code interpreter 的な使い方も見たい
逆に、価格や実務導入の分かりやすさを最優先するなら、Kimi や DeepSeek のほうが比較しやすいことがあります。
DeepSeek V3.2
DeepSeek の魅力は、いまだに 価格対性能の攻めやすさ にあります。
公式ドキュメントでは、deepseek-chat が non-thinking、deepseek-reasoner が thinking モードとして V3.2 系に対応しています。DeepSeek は OpenAI 互換APIで呼びやすく、text中心の推論・コーディング補助・長文対話では依然として有力です。
強いのは、
- まず安く試したい
- text中心の実務で十分
- OpenAI 互換で既存コードを大きく変えたくない
- chain-of-thought を含む reasoning モードを使い分けたい
というケースです。
一方で、multimodal や UI / 動画込みの総合力で見ると、Kimi や Qwen のほうが話が早いです。
GLM-5
GLM-5 は、4モデルの中でいちばん engineering 指向が強い モデルです。
Z.AI の公式説明でも、GLM-5 は「Agentic Engineering」を掲げ、200K context、128K output、強い function call / structured output / caching を備えています。さらに SWE-bench Verified 77.8、Terminal Bench 56.2 といった数字をかなり前面に出していて、コーディングや長距離agentでの実務投入を強く意識しています。
つまり GLM-5 は、
- backend refactoring
- 複雑なバグ修正
- 長い multi-step task
- agent による段取りと実装の往復
このへんを重く見る人に刺さります。
OpenAI / Claude の代替というより、中国系モデルの中で一番「仕事を進める主力」っぽい のが GLM-5 です。
Kimi K2.5
Kimi K2.5 は、4モデルの中でいちばん 総合バランスが良い です。
Moonshot AI の公式情報では、K2.5 は multimodal、thinking/non-thinking、dialogue and agent tasks をまとめて支えるモデルとして位置づけられています。256K context、画像/動画入力、tool calling、context caching を揃えつつ、価格も Input $0.60 / Output $3.00 と比較的攻めやすいです。
さらに Kimi は、frontend code quality や design expressiveness もかなり強く訴求しています。
要するに、
- APIで幅広く使いたい
- coding もしたい
- 画像 / 動画も見たい
- まず1つで広く試したい
という人に一番すすめやすいです。
実務観点で比較すると何が違うか
1. coding / agent の主力にしやすいのはどれか
この軸では GLM-5 が最有力 です。
理由は、公式の立ち位置からして coding と long-range agent を主戦場にしているからです。200K context、128K output、function call、structured output の揃い方も、単なるチャット用途ではなく「長く進める仕事」に向いています。
次点は Kimi K2.5 です。Kimi は coding 専用モデルではないものの、agent と multimodal を両立しながら UI 生成や長文にも強いので、開発補助の総合力は高いです。
2. マルチモーダルまで含めて広く使いたいならどれか
ここは Kimi K2.5 と Qwen 3.5 が主役です。
- Kimi K2.5: 画像 / 動画 / agent / 長文が1つにまとまっていて、導入判断がしやすい
- Qwen 3.5: native multimodal と 1M context のスケール感が魅力
Qwen 3.5 の方が構想は大きく見えますが、実務の「まず触る」ハードルでは Kimi K2.5 の方が分かりやすいです。
3. コスト重視で選ぶならどれか
この軸では DeepSeek 系 が依然として強いです。
DeepSeek は価格の攻めやすさが魅力で、text中心の要件ならかなり現実的です。GLM-5 は Input $1 / Output $3.2、Kimi K2.5 は Input $0.60 / Output $3.00 なので、Kimi も十分戦えますが、「まず最安寄りで試す」なら DeepSeek が候補に残ります。
ただし、安いから全部 DeepSeek で統一 は雑です。
画像、動画、UI、複雑なagentまで含めると、Kimi や GLM の方が最終的な運用効率が高いケースは普通にあります。
4. 長文処理で見るとどうか
- Qwen 3.5: 1M context が強烈
- Kimi K2.5: 256K context でかなり広い
- GLM-5: 200K context + 128K output で実務向き
- DeepSeek V3.2: 十分使えるが、長文が最大の売りではない
長文の「数字」だけなら Qwen 3.5 が目立ちます。 ただし、実務では単に context が長いだけでなく、その長さの中で task を崩さず進められるか が重要です。その意味で、engineering 文脈なら GLM-5、汎用では Kimi K2.5 がかなりバランスが良いです。
5. 日本語利用・商用導入での注意点
ここは性能比較だけでは決めない方がいいです。
見るべきなのは以下です。
- 契約・請求・サポートのしやすさ
- データ保存や利用規約
- 商用利用時のガバナンス
- 日本語品質の安定性
- 社内で説明可能な導入根拠
つまり、モデル性能で候補を絞った後に、法務・ガバナンス・運用要件を別トラックで確認する のが正解です。
OpenAI / Claude / Gemini と比べるとどうか
ここは過大評価もしない方がいいです。
中国系モデル群は、以下ではかなり強いです。
- コスト
- 長文
- オープン寄り運用
- agent / coding の尖り
- マルチモデル戦略の組みやすさ
一方で、以下は慎重に見るべきです。
- 企業契約の安心感
- グローバルなサポート体制
- 日本語の細かいニュアンス安定性
- 周辺ツールや外部連携の成熟度
なので結論は、全面置換より併用 が現実的です。
たとえばこんな分け方がかなり自然です。
- 主力チャット / 対外品質重視 → Claude / OpenAI
- 安価な text 処理 → DeepSeek
- coding / long agent → GLM-5
- multimodal + 汎用agent → Kimi K2.5
- Alibaba / Qwen 基盤連携 → Qwen 3.5
どの人にどれがおすすめか
Qwen 3.5 がおすすめの人
- Qwen / Alibaba Cloud を使う人
- multimodal と long context を両方重視する人
- tool use を前提に実験したい人
DeepSeek 系がおすすめの人
- まず安く試したい人
- text中心の推論・要約・開発補助が主用途の人
- OpenAI 互換で移行コストを下げたい人
GLM-5 がおすすめの人
- コーディングagentを実務投入したい人
- 長いタスクを途中で崩したくない人
- backend / systems engineering を重く見る人
Kimi K2.5 がおすすめの人
- まず1つのモデルで幅広く試したい人
- coding と multimodal の両方が必要な人
- 画像 / 動画 / UI 生成まで見据える人
迷ったときの選び方
迷ったらこう選べば大きく外しにくいです。
- まず1本 → Kimi K2.5
- coding 主力 → GLM-5
- 最安寄り text API → DeepSeek 系
- Qwen / Alibaba 文脈 → Qwen 3.5
もし AI コーディング全体のツール比較まで広げたいなら、AIコーディングツール比較 2026年版 も合わせて見ると、モデル単体ではなく運用レイヤーまで判断しやすくなります。
また、軽量モデルをどう組み合わせるかまで考えたいなら、軽量AIコーディングモデル比較 も参考になります。
まとめ
中国系AIモデル比較は、ひとことで「安い代替候補」では片付きません。
2026年時点では、
- Kimi K2.5 は総合バランス
- GLM-5 は coding / agent の主力感
- Qwen 3.5 は long context と multimodal のスケール感
- DeepSeek 系 は低価格text運用
という棲み分けで見るのが実務的です。
そして一番大事なのは、ベンチマークの勝ち負けではなく、自分の業務にどの失敗コストがあるか で選ぶことです。
- UIや画像まで扱いたいのか
- 長いタスクを任せたいのか
- とにかくAPI費を落としたいのか
- 既存基盤にどう載せるのか
この順で見れば、かなり判断しやすくなります。