先に結論
複数の LLM をまたいで使う人にとって、いま大事なのは 最安単価そのもの ではなく、どの課金方式なら運用事故を起こさずに使い切れるか です。
結論を先に置くと、こうです。
- 請求をまとめつつ複数モデルを横断したい → OpenRouter
- 個人で定額寄りに雑に使いたい → Poe の subscription / Max 系
- 単価最優先、監査性最優先、プロダクション統合前提 → OpenAI / Anthropic / Google 直契約
- Wafer Pass が気になる → 現時点では 価格と制限が公開確認できるまで様子見
つまり、今の本命は Wafer Pass ではなく、OpenRouter と直契約のどちらを基準にするか です。Poe はその中間で、個人の使い放題志向には強いですが、チーム請求や API 統制では一段落ちます。
料金と運用の感覚をさらに詰めたいなら、Codex pay-as-you-go vs Claude Max/Team vs GitHub Copilot Pro+ や Gemini API Flex vs Priority inference も合わせて読むと判断しやすいです。
なぜ今この比較が重要か
Product Hunt で Wafer Pass が露出し、複数 LLM をひとつの支払い体験で使いたい需要が見えました。一方で、既存の本命はすでに揃っています。
- OpenRouter はモデル横断の集約従量課金
- Poe は多数モデルを定額寄りに触れる個人向け導線
- OpenAI / Anthropic / Google は API 直契約で単価を取りにいく王道
ここで迷いやすいのが、「複数 LLM を使うなら全部まとめたほうが安いのか」という点です。実際にはそう単純ではありません。
- まとめ課金は請求が楽
- 直契約は単価が強い
- 定額は予算事故を防ぎやすい
なので比較軸は、価格表の見た目より 請求のまとまり、モデル切り替え、利用上限、監査性 の4つで見るほうが失敗しません。
比較表
| 比較軸 | Wafer Pass | OpenRouter | Poe Max / subscription | 直契約(OpenAI / Anthropic / Google) |
|---|---|---|---|---|
| 課金の主語 | 要確認 | 前払いクレジット型の従量 | 定額寄り subscription | 各社ごとの従量課金 |
| 公開価格の確認しやすさ | 低い | 高い | 中 | 非常に高い |
| モデル横断性 | 高そうだが要確認 | 非常に高い | 高い | 低い |
| 単価最適化 | 要確認 | 中 | 低〜中 | 非常に高い |
| 上限管理のしやすさ | 要確認 | 高い | 非常に高い | 中 |
| チーム監査性 | 要確認 | 中 | 低 | 非常に高い |
| 個人 heavy user との相性 | 要確認 | 高い | 非常に高い | 中 |
| 本番 API 統合との相性 | 要確認 | 高い | 低 | 非常に高い |
4つの選択肢の違い
Wafer Pass は話題先行、まだ価格確認待ち
Wafer Pass は Product Hunt 露出で気になる存在ですが、2026-04-19 時点では 公開価格ページを確認できていません。つまり、比較候補として追う価値はあるものの、現段階で本命に据えるのは早いです。
判断に必要なのは少なくとも次の4点です。
- 月額か従量か
- 対象モデルが何か
- レート制限と同時実行制限
- 請求主体と領収書の扱い
この4点が見えないままでは、「安く見えるけど実は heavy use で詰まる」リスクを切れません。なので Wafer Pass は、今買う候補 というより ウォッチ対象 として置くのが安全です。
OpenRouter は「請求をまとめたい人」の本命
OpenRouter の強みは、複数プロバイダのモデルを一つの請求先で使いやすい ことです。OpenRouter の docs でも credit ベースの quota や billing が前提になっており、前払いクレジットで運用しやすい形です。
この方式が強いのは次のケースです。
- OpenAI、Anthropic、Google 系を横断したい
- 請求先をまとめたい
- 特定モデルの障害時に切り替えたい
- 小規模チームで「まず一枚のカードで回したい」
一方で弱みもあります。OpenRouter 自体が最安単価を保証するわけではありません。単価最優先なら直契約が勝ちやすい です。OpenRouter は、単価だけでなく 運用を簡単にするためのプレミアム を払う感覚に近いです。
Poe Max は「個人の定額感覚」が強い
Poe の About ページでは、Poe is free for most usage. For advanced usage, we offer a range of subscription plans starting at $4.99/month. と案内されています。つまり Poe は、API 請求よりも 定額寄りの使いやすさ が主語です。
Poe が向くのは、次のような個人用途です。
- いろいろなモデルを試したい
- API キー管理よりアプリ体験を優先したい
- 月額でざっくり上限管理したい
- プロンプト試作や比較検証を速く回したい
逆に、チーム請求、監査ログ、API 本番統合では弱いです。Poe は 作る側 より 使う側 の課金に寄った商品です。だから、個人 heavy user には向きますが、業務システムの本番裏側には向きません。
直契約は「最安単価と監査性」の王道
直契約の最大の利点は、やはり 単価の強さ です。2026-04-19 時点の公開価格では、代表例として次の水準が見えています。
- OpenAI GPT-5.4: input $2.50 / 1M、output $15.00 / 1M
- Anthropic Sonnet 4.6: input $3 / MTok、output $15 / MTok
- Google Gemini 2.5 Pro: input $1.25 / 1M、output $10.00 / 1M
- Google Gemini 2.5 Flash: input $0.30 / 1M、output $2.50 / 1M
単価だけ見れば、用途次第では直契約がかなり強いです。さらに強いのは監査性です。
- ベンダーごとの利用状況を追いやすい
- チーム別の予算管理を設計しやすい
- データ保持や契約条件を直接確認しやすい
- 本番 API の障害切り分けが明確
ただし当然、請求は分かれます。OpenAI、Anthropic、Google を全部使えば、経理処理もアラート設計も3系統 になります。ここが直契約の面倒さです。
どれが一番安いのか
単価だけなら直契約が最有力
単価ベースでは、直契約がいちばん勝ちやすいです。特に Gemini 2.5 Flash のような軽量モデルまで含めると、ルーティング手当なしでかなり低単価に寄せられます。
ただし、ここでの落とし穴は 運用コストをゼロ扱いしないこと です。
- モデル切り替えロジック
- API キー管理
- 利用上限の監視
- 各社の障害切り分け
- 請求先の分散
これらを自前で持つなら、表面単価の差がそのまま得になるとは限りません。
実運用コストまで入れると OpenRouter が強い
OpenRouter の価値はここです。多少の単価差があっても、
- 請求先を1つに寄せられる
- モデル切り替えが速い
- PoC から本番まで流しやすい
という運用コスト削減が効きます。特に、AI 比較記事を量産したり、社内で複数モデルを試すチームではこの差が大きいです。
月額の安心感だけなら Poe が強い
Poe は逆に、単価ではなく 月額の安心感 で勝つタイプです。個人が雑に複数モデルを触るにはかなり相性が良いです。ただし、API を裏で回すワークロードにはそのまま持ち込みにくいので、作業用 UI の定額 として見るのが自然です。
どの人にどれが向くか
OpenRouter が向いている人
- 複数プロバイダを横断したい
- 請求先をまとめたい
- まだどのモデルに固定するか決めていない
- まず実運用を楽にしたい
この場合は OpenRouter が最も無難です。比較記事の制作、社内検証、マルチベンダー PoC と相性が良いです。
Poe が向いている人
- 個人で色々なモデルを触りたい
- API よりチャット体験を優先する
- 月額でだいたい固定したい
- 多少の制約より気軽さを優先する
この場合は Poe の subscription が自然です。特に「モデル探索の定額 playground」としては強いです。
直契約が向いている人
- 本番 API を組み込む
- 単価を細かく管理したい
- セキュリティ、監査、契約条件を重視する
- 利用量が大きく、単価差が利益に直結する
この場合は直契約が最も強いです。個別の比較なら Gemini API Flex vs Priority inference も参考になります。
Wafer Pass を追うべき人
- 新興の LLM pass をいち早く試したい
- Product Hunt 起点の新サービスを先回りで見たい
- まだ運用を固める前の探索フェーズにいる
ただし現時点では、ウォッチはするが本命化はまだ です。価格と制限が見えるまでは、比較記事の中で「選択肢として把握する」に留めるのが安全です。
迷ったときの決め方
最後はこれで十分です。
- 本番 API と利益率が主語 → 直契約
- 請求集約とモデル横断が主語 → OpenRouter
- 個人の使い放題感が主語 → Poe
- 新顔を追うが、まだ賭けたくない → Wafer Pass を観測
いま最も現実的な初手は、OpenRouter で横断運用を始め、利益が大きい経路だけ直契約へ寄せる 形です。これなら、請求と運用の楽さを取りつつ、最終的に単価最適化へも寄せられます。
参考にした公開情報
- Poe About: subscription plans starting at $4.99/month
- OpenAI API Pricing: GPT-5.4 $2.50 / 1M input, $15 / 1M output
- Anthropic Pricing: Sonnet 4.6 $3 / MTok input, $15 / MTok output
- Google Gemini API Pricing: Gemini 2.5 Pro $1.25 / 1M input, $10 / 1M output
- Google Gemini API Pricing: Gemini 2.5 Flash $0.30 / 1M input, $2.50 / 1M output
- OpenRouter docs: credit-based quotas / billing の構造
- Product Hunt: Wafer Pass の露出確認、ただし価格ページは別途確認継続