先に結論
GitHub Copilot の定着を見直すなら、もう active user 数だけでは足りません。
GitHub は 2026-05-29、Copilot usage metrics API に AI adoption cohorts を追加しました。これで管理者は、利用者が code completion 中心なのか、agent まで進んでいるのかを 28 日単位で追えます。
大事なのは、数字が増えたことではありません。どこで利用が止まっているかを説明できるようになった ことです。
- completion と IDE 中心で止まっているなら、enablement が足りない
- agent-first までは進むのに multi-agent が伸びないなら、運用導線が弱い
- multi-agent が増えているなら、追加ライセンスや展開拡大の判断をしやすい
Copilot の管理ポリシーや組織標準を見直したいなら、GitHub Copilot Business / Enterprise のモデル承認ガイド もあわせて読むとつながります。
何が変わったのか
今回の更新で増えたのは、ユーザー別の ai_adoption_phase と、集計用の totals_by_ai_adoption_phase です。
ai_adoption_phase はユーザー単位のレポートに入り、各利用者がどの段階にいるかを示します。totals_by_ai_adoption_phase は enterprise と organization の 28 日レポートで使われ、phase ごとの engaged user 数や activity average をまとめて見られます。
GitHub の説明では、判定は 直近 28 日で 2 日以上使った surface を基準に行われます。単発で少し触っただけでは上位 phase に上がりません。
加えて、各 phase には version フィールドも付きます。今は v1 ですが、今後 Copilot の surface が増えても、分類ルールの変更を追いやすくするための設計です。
4 つの phase はこう読む
Phase 0: No cohort
ここは、どの phase の条件も満たしていない層です。
seat は配っているのにここが大きいなら、まず疑うべきは onboarding です。ライセンス割り当て、拡張機能の有効化、社内案内の不足を先に見たほうが早いです。
Phase 1: Code first
Code first は、code completion や IDE agent mode の利用が中心の段階です。
Copilot は使われていますが、使い方がまだ editor の中に閉じています。DAU が伸びていても、この層に偏るなら agent 導入はまだ始まっていません。
Phase 2: Agent first
Agent first は、Copilot cloud agent、Copilot code review、Copilot CLI のいずれか 1 つを使う段階です。
ここまで来ると、利用者は補完だけではなく、作業の委譲やレビュー支援に踏み込んでいます。agent 導入の手応えを見るなら、まずこの層の増減が目安になります。
Phase 3: Multi-agent
Multi-agent は、GitHub 系 agent surface を 2 つ以上使うか、GitHub Copilot app を使う利用者です。
この層が増えているなら、Copilot は単機能の補助ではなく、開発フローの複数地点で使われ始めています。追加ライセンスや高度機能の展開判断をしやすいのは、だいたいここからです。
何が見えるようになるのか
一番大きいのは、同じ active user でも中身がまるで違う と分かることです。
たとえば monthly active users が横ばいでも、code-first から agent-first へ移っていれば定着は前進しています。逆に DAU が高くても code-first に張り付いたままなら、導入の深さはまだ浅いです。
enterprise と organization の集計レポートでは、phase ごとに次の指標を平均値で見られます。
- engaged users
- user-initiated interaction
- code generation と acceptance activity
- 追加・削除された lines of code
- pull request の作成、マージ、レビュー
- median time to merge
ここで重要なのは、合計ではなく phase 内ユーザー平均 だという点です。人数の多い phase に引っ張られにくいので、enablement の効き方を見やすいです。
管理者が次にやること
1. 既存の export フローに cohort 列を足す
いちばん先にやることは、今の usage metrics 取得フローに新しい列を足すことです。
すでに 28 日レポートを取り込んでいるなら、ユーザー別レポートに ai_adoption_phase を追加し、集計側で totals_by_ai_adoption_phase を読み込めば始められます。大規模なダッシュボード刷新から始める必要はありません。
2. team 単位で join して止まりどころを見る
どのチームで agent 利用が止まっているかを見たいなら、user-teams レポートとの join が次です。
GitHub は 5 月中旬に team-level metrics の組み立て方も案内しているので、cohort を team で切ると、どこに enablement を打つべきか見えやすくなります。Copilot cloud agent の展開を進める前提整理としては、GitHub Copilot cloud agent のロールアウトガイド も相性がいいです。
3. 追加ライセンス判断より先に enablement を打つ
agent-first と multi-agent が少ないとき、すぐ seat を増やしても効かないことがあります。
completion から agent へ進む導線が弱いなら、まず必要なのは社内デモ、CLI 導入ガイド、code review 活用例です。coding agent を比較したい読者なら、GitHub Copilot coding agent vs Claude Code vs Codex|監査性・安全性・レビュー運用で選ぶ も判断材料になります。
この更新が効く読者
Enterprise admin
Copilot の利用状況を経営や procurement に説明する立場なら、DAU だけよりはるかに話しやすくなります。どの段階の利用が多いかを見せれば、追加投資の理由も止める理由も出しやすくなります。
EM / developer productivity 担当
チームごとの差を見て、どこに onboarding や training を入れるかを決めやすくなります。利用が弱いチームを感覚で探す必要が減ります。
Platform / enablement 担当
agent-first に進まない理由が、権限不足なのか、導線不足なのか、成功事例不足なのかを切り分けやすくなります。enablement 施策の前後比較にも向いています。
注意点
この API をすぐ使えるとは限りません。
前提として、enterprise の Copilot usage metrics policy を Enabled everywhere にしておく必要があります。権限も enterprise administrators、organization owners、または usage metrics を見られる権限を持つユーザーに限られます。
また、phase は 28 日で 2 日以上使った surface を前提にした分類です。短期のキャンペーン直後に数字だけ見て結論を急ぐより、数週間単位で変化を見るほうが向いています。
まとめ
GitHub Copilot usage metrics API の AI adoption cohorts 追加で、管理者は 利用人数の把握 から 利用の深さの把握 へ進めるようになりました。
見るべきポイントは 3 つです。
- user レポートには
ai_adoption_phaseが入る - enterprise / organization レポートには
totals_by_ai_adoption_phaseが入る - 28 日で 2 日以上使った surface をもとに、code-first、agent-first、multi-agent を切り分けられる
Copilot の ROI を説明したい組織ほど、この更新は効きます。seat 数や DAU の報告で止まっているなら、次は cohort を足して、どこで定着が止まるのかまで見たほうがいいです。